2023年08月04日

あなたの知らないビジネスの世界探訪 -vol.13-

YouTubeやコロナ禍で変化した動画配信業界に迫る。

世の中にはさまざまなニーズが存在し、多種多様なビジネスがあります。業界内の人々にとっては当たり前のことでも、業界外に出てみると知らないことばかりです。

今回のビジネス探訪は、動画配信サービスを展開する株式会社Jストリームからライブ配信を担当している大塚さんにお話を伺いました。動画配信業界のコロナ禍での動き、昨今の動画配信サービスの勢いに関して、業界人の目線から教えていただきました。ぜひ内容を楽しんでみてください。

大塚 道郎MICHOROU OOTUKA

1989年株式会社リクルートに入社。リクルート国際VAN、リクルートFNX事業部を経験。2001年に株式会社Jストリームに入社。システム開発部長、技術部長を経て、2013年以降10年に渡りライブプロデュース部長としてライブ中継サービスの提供に携わる。

追い風になった昨今の動画配信サービスの勢い

酒井

元々Jストリームが動画配信サービスを行ったんでしょうか?

大塚さん

アメリカで開発され展開され始めていた動画配信技術を、日本でも展開しようとする流れの中で、まず国内に動画配信をするための環境を整備する必要がありました。動画配信には普通のウェブサーバーではなく動画配信専用のサーバが必要であったり、テキストデータに比べてデータ量の多い動画データを安定的に流すことができるネットワークが必要だったり。その動画配信の環境を作る為に出来上がったのが、Jストリームですね。日本で動画配信するインフラを整える会社として作られた会社です。

酒井

なるほど。日本に動画配信技術を持ってこようと思って立ち上がった人達が作った会社という事ですね。

酒井

最近、YouTubeの勢いが凄いですが、昨今の動画配信サービスの勢いは追い風ですか?

大塚さん

ですね。インターネットで動画を見ることが出来ない時代があったなんて若い人たちには信じられないと思うけれど、YouTubeを中心に、インターネットで動画を見る事が一般的になってくれた事は我々にも追い風になりました。我々は、ビジネス向けのサービス提供がメインで、YouTubeがメインにしている利用者対象とは少し異なるところでサービス展開をしています。

酒井

なるほど。「動画」が普及することによって認知度が上がりマストなアイテムになりますし。

コロナ禍で変化した動画配信業界

酒井

現在、大塚さんが携わっている領域はどこになるのでしょうか?

大塚さん

私は生放送を担当しています。

酒井

インターネットライブなんかもやられているんでしょうか?

大塚さん

はい、まさにその分野が担当になります。ライブ配信自体は会社が設立された当初から行っていましたが、特にこの2,3年は新型コロナ感染防止ということでリアルイベントの中止等が多数あったじゃないですか。そこがもう爆発的にインターネットライブが伸びるポイントだったんですよ。

酒井

へぇ〜そうだったんですか!

大塚さん

例えば、エンターテイメント系のライブもコロナ以前からインターネットでのライブ中継も行われてはいましたが、コロナ禍においては、 アーティスト側が会場に観客を入れることができなくなり、その代わりにネットでライブをやることが非常に多くなりました。

酒井

あぁ~やるようになりましたよね!

大塚さん

さらに、実は一般企業さんのイベントも、今までは会場に人を集めてやっていたものが、コロナ禍では集まってイベントが出来ないから、ネットでイベントを行おうっていう流れが出来たんです。イベントはリアルに集まってやるものという概念が変化して、ライブをネット中継するのが急激に当たり前になっちゃったっていうことも、ライブの需要がものすごく伸びた理由ですね。

酒井

なるほど。確かに変化しましたね。数でいうとどの位増えたのでしょうか?

大塚さん

コロナ以前はライブ放送を年間で1500本程やっていたのですが、コロナで約2倍の3000本程に増えました。リアルにイベントをやっていたものが、営業活動をリアルに出来ないからセミナーが増えたりとか。コロナ禍では多い時で1日20本とか生放送を行っていました。需要がものすごく伸びたのがコロナの2年間って感じですね。

酒井

へぇ2倍も!

大塚さん

だから、コロナが5類になった現在、やっぱりアーティストの対面ライブは復活してきましたけど、リアルな会場開催と一緒に、来れない人のためにウェブでも配信するっていう、リアルとウェブのハイブリッド開催というパターンも増えている状況です。

大塚さん

ただ、コロナは接触機会を極力減らさないといけないから会場に多くの人が集まってはいけないんですけど、生放送をするにはどうしても会場にスタッフが集まらなければならず、我々は現場に行くしかなくて、でもスタッフからも感染者を出してはいけないし、当然出演者の方への感染も起こしてはいけない、という厳しい状況での運営を、コロナ禍の2年間続けてきました。

酒井

結構大変だったんですね。御社のライブ配信はどういったものが多いんでしょうか?

大塚さん

当社のライブ中継の中の8割強くらいが、医薬系ウェブセミナーというウェブ上で行う学術的な講演会となっています。処方薬の効果的な投与方法やメリットデメリット等の最新の薬の情報を、全国の医療従事者の皆様にお届けする講演会です。

酒井

そういう講演会はどこで行われるんでしょうか?

大塚さん

著名な医師や教授の方が講演者となり、全国の医療従事者に向けて情報を提供する講演会なので、ホテルで行うことが多いですね。ご講演される著名な医師の皆様は大変お忙しく、また、昨今はコロナ感染防止もあり、都内の配信スタジオに来ていただく為の移動時間や、移動そのもので発生する感染リスクを回避するため、ご講演される先生方のお近くのホテル会場からライブ中継ができる方が有難いというのもあって。我々ライブ中継スタッフがホテル会場に中継機材一式を持ち込んで中継を行っています。

酒井

それはあれですか?処方箋とか効果効能をやっぱ医者の立場で語るっていうのは大事なんですね。

大塚さん

そうですね。ご講演される先生方は、その領域における大変著名な先生方であり、貴重な研究成果果や試験結果をお話しされますので、ご視聴される医療従事者の方々には非常に貴重な情報になっているようです。専門的な医学用語でお話しをされるので、我々には難しくてまったく分からないんですけど。。。

酒井

すごく素朴な質問していいですか?コロナ前でもホテルで開催していたのでしょうか?

大塚さん

そうですね。コロナ前もホテルで行っていました。このような講演会はかなり前から行われていましたが、ホテルの大きな会場に皆様にお集まりいただいてご講演を聴く、というスタイルがメインでした。ただ、その方法では、毎回非常にコストがかかり、お集まりいただく医療従事者の皆様の時間的な拘束も長くなる等の理由もあって、対面での講演会から、ウェブ講演会への切替が進んできていました。それがさらにコロナ禍になって、倍増した形です。また、同時にZoomやTeamsなども、コロナ前から使用していましたがコロナになってから一気に皆さん使用するようになりましたよね。それと同じような状況です。

大塚さん

ZoomやTeamsといったWeb会議のツールの利用が一般的になったことで、ウェブ講演会のやり方にも変化があり、Web会議ツールをつかって複数の地方拠点から複数の先生方にリモート出演していただいて一つのウェブ講演会を構成する、といった事も行っています。

酒井

市販品を専門システムの中で上手く組み込んでいるんですね。

大塚さん

そうですね。Web会議ツールではできないような、少しレイアウトを凝ったものにするとか、組み込んでいるけど自然に背景と上手く合成するとか工夫しています。

酒井

だいぶ生放送に関するノウハウ溜まってますよね。ライブ配信で一番求められるのは何でしょうか?

大塚さん

やはり一番求められるのは安定性ですね。ライブ中継なので配信が止まってしまう事は一番許されない事です。とはいえ、様々な機材を使い、様々な環境で行うので絶対にトラブルは起きない、という保証はありません。トラブルが起きたとしても視聴者はトラブルが起きたと思わせないカバー力も必要です。我々は、配信プラットフォームを提供している会社でもあるので、システム的にも様々なアクシデントを想定したシステム構成を行うとともに、現場スタッフの対応スキルを磨いて、安定した配信を提供できるようにしています。

酒井

ライブだから後戻りできないですもんね。
最後に、今後のビジョン等あれば教えてください。

大塚さん

YouTubeを始め、動画配信サービスが一般的となった現在では、一般の方々もライブ中継が簡単にできる環境が整備されています。そのような状況の中でも、やはり我々のようなプロフェッショナルが、失敗のできない重要なライブ中継をしっかりと対応していくことは基本的な部分で重要であると考えています。また、まだまだテレビと違ってウェブだからこそできる見せ方といった部分については確立途上ですので、そういった部分での提案が出来たらと思います。また、新しい技術、たとえば、見たい人が見たいカメラ画面を見れるようなマルチアングル(推しカメ)配信等も存在しているけどまだまだ知られてないし、その活かし方も知られていない。さらに、音質にこだわった高音質配信や、立体音響配信など、プロでなければできない最新技術を使った配信の普及も重要だと考えています。多くの業界でインターネットライブを活用いただける領域を広げ、視聴される方の満足度を上げることや、企業様のマーケティング活動に活かしていただけるような取組を進めていきたいです

酒井

大塚さん、ありがとうございました♪

大塚さん

ありがとうございました!

今回の発見

  1. YouTube等の動画配信サービスの勢いのおかげで、動画を見ることが当たり前になり、動画配信を提供する会社は追い風になった。
  2. コロナ禍でライブ中継の需要が伸びた。5類になった現在でもライブ配信とリアル開催のハイブリッドのライブが行われている。
  3. ライブ配信では、安定性とトラブルに視聴者に気付かれないように動く臨機応変にカバーできる力が必要。

今回の記事いかがでしたでしょうか?

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